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グレートジャーニーの果てに

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東アフリカで誕生した人類が700万年かけて世界中に移動していった偉大なる旅。
関野芳晴さんがその足跡をたどったことでも知られているグレートジャーニーである。
その関野さんが最近は、新グレートジャーニーとして人類が日本列島に渡ってきたルートをたどっている。
先日テレビで、手作りの丸木舟でそのルートの一つであるインドネシアから石垣島までの4700キロの航海を成し遂げた様子を放映していた。
これには素直に感動させられたけれど、グレートジャーニーについては「本当にそうやって人類は広がったの?」と、なかなかすんなりとは受け入れることができずにいる。

何が人類をそんな果てしのない旅へと駆り立てたのだろう?
アメリカ大陸に渡るためには極寒の地のベーリング海峡まで北上しなければならないのだ。
より住みよい場所を求めて移動するのならば分かるけれど、氷に覆われた不毛の土地へ自ら進んで足を踏み入れる人間はいないだろう。

最近放映されたNHKのドキュメンタリー「ヒューマン なぜ人間になれたのか」でもグレートジャーニーが題材になっていた。
それを見ていると、隣人あるいは他人種(ネアンデルタール人)などとの争いも移動を始めるきっかけの一つであったようだ。

ここで不思議に思ったことがある。
人間で溢れかえっている現在の地球上でなら争いが起きるのは理解できるけれど、6万年前の地球上で隣人とトラブルが生じる程、人口密度が高かったのだろうかということだった。

そんなことを考えていると、突然、北海道の人口密度のことが浮かんできた。
今でこそ一部の都市に人口が集中しているけれど、昔の北海道はもっと広く隅々まで人が散らばって住んでいた。
当時盛んだった林業や鉱業では、本当の山奥と言える場所に大きな町が形づくられていた。
それらを結ぶ鉄道は網の目のように北海道中に張り巡らされていた。
そして開拓農家は、わずかな土地を求めて沢の奥深くまで入り込んでいた。

今はそのほとんどが消えてなくなり、一部が廃墟として残っているか、全てが元の自然に帰してしまったかのどちらかである。
当時は今よりも北海道の総人口は少なかったのに、部分的な人口密度は今よりずーっと多かったのだ。

仕事のある場所に人が住む。
それが自然な成り行きである。
ところが現代は、田舎には仕事がないからと言って都会に人が集まってくる。
何か変である。
こんな時代に生きていると、グレートジャーニーを理解できないのも当然かもしれない。

アイヌだけが北海道に住んでいた頃、人口はもっともっと少なかったはずだ。
それなのに十勝のアイヌと日高のアイヌが戦ったりとか、争いが絶えなかったようだ。
更にその昔は謎のオホーツク人とアイヌが争っていたとの説もある。

僅かな食料を求めての争いだったのだろうか?
でも、当時の北海道の自然を考えれば、川という川にはサケが大量に遡上し、決して「僅かな食料」というような状況ではなかったはずだ。

身近な北海道のことから考えてみても、やっぱり分からない。
結局、人類は野生動物と何ら変わりはなく、自分の縄張りを広げることだけを目的に争い合い、それがグレートジャーニーの原動力となったのだろう。
そして人類が世界中に広まった後もこの争いは止むことなく、現在まで続いているのである。

既に新しく移動するべき土地もなく、自分の地を守るためには敵の核施設を先制攻撃で叩き潰すしかない。
生き残る手段であったグレートジャーニーを終えた現代、人類の未来はあまり明るいものではなさそうである。

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