見聞ログ

元々が人前で話すのが得意ではないので、もしもこれで大人120名を前にしたとしたら相当にビビッていたかもしれない。
ところがそこに並んでいるのは、胡散臭いものを見るような目つきの大人たちではなく、純粋な好奇心で目を輝かせている子供たちだった。
それに、当たり前のことだけれど体も小さいので、120名集まっても威圧感が全く感じられない。
その様子を見てこちらも直ぐにリラックスできて、今日は子供たちの好奇心を満たしてあげられるような話をしようと決めたのである。

まずは子供たちが、自分で調べてきた街路樹の役割を発表する。
その中で「インターネットで調べました」と得意そうに話す子供が多いのが気になった。
大学生のレポートでも、ネット上のブログなどからコピーペーストするだけで仕上げてしまう例も増えているそうだ。
いわゆるコピペ文化。他人の言葉を受け売りするだけで、ネットで調べたとしても全く自分の実になっていない
これではますます、自分でものを考えられない人間が増えるばかりである。
そんな発表が続く中で、「僕は風に吹かれて街路樹の葉がこすれあう音が好きです。」と、たどたどしくしゃべる男の子がいた。
何とも素晴らしい感性である。
今の画一的な教育が、こんな感性を持った子供を埋没させてしまわないだろうか。
急にそんなことが心配に思えてきた。

ネットで調べただけのような内容に対しては、なるべく身の回りで直接感じられるような例をあげてコメントしてあげる。
その男の子の発表に対しては、こちらも素のままで感動する。
今時の子供は、小賢しく大人の裏の部分まで見てしまう傾向があるので、 そんな子供に接する時はこちらも子供と同じような素直な心を持っていたい。
最後に、街路樹を好きになって、木を好きになって、自然を好きになって、そして地球を大切にして、そんな趣旨の話で締めくくった。
子供たちが理解できたどうかは分からないけれど、少なくとも私の気持ちを伝えることは出来たような気がする。

先生方の様子も同時に見ていると、どうも子供たちの気持ちを全く理解していないような先生が一名だけいたみたいだ。
先生と言っても普通の人間なのだから様々なタイプの人がいるのは理解できるけれど、こんな先生に自分の子供の教育を任せる気にはなれない。
これならまだ自分の方が教師として上手くやっていけそうな気がする。
「一番なりたくない職業は学校の先生」などと高校生の頃に考えていたこともあったけれど、今回子供たちの前で話しをしてみて、 教師という仕事の面白さを知ることができた。
それぞれが全く違う個性を持ち合わせた子供たちを、その個性を殺してしまうことなく、伸び伸びと育ててあげる。
とても遣り甲斐のある仕事だと思う。

でも現実の教育現場では、モンスターペアレントに振り回される現実もあると言う。
もしかしたら今教育が必要なのは子供たちよりもその親じゃないのか、そんな気がするのである。