戦争論

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docomoの雑誌読み放題サービスを利用するようになって毎週欠かさず読んでいるのが、週間SPAの連載漫画であるゴーマニズム宣言。
これを描いているのが小林よしのりである。
その名前は以前から知ってはいたけれど、「右翼論壇の一人なのだろう」程度の認識しか持っていなかった。
それがたまたまゴーマニズム宣言を読んで、右でも左でもないその考え方にすっかり惹かれてしまった。
今の政治についても、気持ち良いくらいに一刀両断してくれて、私の中でもやもやと燻っていたものが見事に整理されたような気がした。
確かに、全体的には右寄りの視点が多いけれど、その基本となる考え方は明快で納得できるものである。

sensouron

そんなところから興味を持って、彼の書いた戦争論全3巻を読んでみた。
しかし、その第一印象はかなり酷いものだった。
週間SPAの連載を読んでいたので、彼がそこで言おうとしていることは理解できたけれど、もしもそれが無ければ「ネトウヨ」が大喜びするだけの本だと思っていたかもしれない。
小林よしのりは、ネトウヨの生みの親と言われているらしいが、本人はネトウヨを蔑視している。
でも、私が戦争論を読んだ印象は「ネトウヨが何時も言っていること、そのまんまの内容じゃないか」だった。
この戦争論をバイブルとしているネトウヨも沢山いるのだろう。

自分は思想的には、右でも左でもないと思っているし、他人が右だろうと左だろうと大して気にはしない。
ただ、ネトウヨだけは嫌いである。
彼らは、思考能力が停止したかのように同じ考えに縛られ、自分の考えと違う人間や組織・国を攻撃することを常とする。
そんなネトウヨが増えてくると、自由に自分の意見を言うことも憚られる様になり、息苦しい世の中になってくる。

と言うか、既にそうなっていて、ネット上では気軽に自分の考えも言えなくなってきている。
下手に何か言おうものなら、直ぐにネトウヨが何処からともなく現れて人格無視の攻撃を受けてしまう。
先の戦争の前には、ネトウヨこそ存在しなかったけれど、同じような状況だったのじゃないだろうか。

まあ、サヨクだって政権を批判することだけしかやっていないのだから、どっちもどっちである。

私は人の意見に影響されやすいタイプで、誰かのもっともらしい考えを聞かされると、直ぐに「その通りだ!」と思い込んでしまう。
しかし、その反対の考えを耳にすると、「なるほど、そんな考えもあるのか!」と、直ぐに考えを変えてしまうのである。

色々な意見がある中で、私は特攻隊を美化することだけは許せなかったし、靖国神社はA級戦犯が合祀されているのが問題だと思っていた。
それだって、小林よしのりの話を聞いていると、この二つも「そうでもないのかな」と思えてきてしまう。

今のところ、私が小林よしのりから受けた影響を覆してくれる様な意見を言ってくれる人には出会えていない。
ネットで調べると、戦争論の中で書かれている内容について、その間違いを指摘しているものも出てくる。
しかし、ネット上で流れているそんな情報は便所の落書きと大して変わらないと思っているので、それを元にして小林よしのりを否定する気にまではならない。

司馬史観という言葉がある。
司馬遼太郎の小説の中で現れている歴史観のことで、明治期を高く評価し、昭和期の敗戦までの日本を暗黒時代として否定している。
司馬遼太郎が好きな私も、今までこの考えをそのまま受け入れていたが、それがゴーマニズム宣言や戦争論によってあっさりと書き換えられてしまった。
そもそも、司馬遼太郎は小説家として小説を書いただけで、本人もそのようなことを述べている。
それを日本の歴史の真実であると思い込むのは、読者の勝手さだろう。

小林よしのりは漫画家として、漫画を通じて自分の意見を述べている。
実はこれが、私が彼の影響を受けた大きな要因かもしれない。
難しい話を活字だけで読む気にはなれない。
ゴーマニズム宣言は漫画だったから興味を持って読んだのだし、戦争論はこれが漫画でなければ絶対に読む気にはならなかっただろう。

まあ、戦争論の内容はあまり好きじゃないけれど、小林よしのりの憲法改正、女系天皇、アイヌ、男尊女卑、桜を見る会、安倍政権、その他諸々に対する考え方は、明快で清々しささえ感じてしまう。
でも、一人の思想に強く影響されるのはあまり良いことではない。
この影響を払拭してくれるような違う考え方にも触れてみたいのだけれど、できれば私の様な人間にも分かるように、それを漫画で表してくれるとありがたいのだが。